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調律師の方に、鍵盤を削っている調律師がいる件について

鍵盤を削っている調律師がいる件について。

それは僕のことです

新しく担当された調律師の方、お客様にご不安があるかと思いますので、

なぜ、鍵盤を削ったかをご説明させていただきます。

最初は木口の下側の角まで落としていましたが、

今は木口を落としていません、そしてある方からご忠告がありましたので、

よっぽどのことが無い限り止めようと思います。


なぜ、鍵盤の下側の角を鉋掛けしたのか?

まず、鍵盤のことを考えましたのでご説明させていただきます

鍵盤はピアノのサイズによって長さが違います。

しかし、スピネットピアノを除き太さはだいたい同じです。

よって鍵盤の強度と特性が長さによって変わることになります

鍵盤の短いピアノは剛性が高く、しなりませんが鍵盤の長いピアノは剛性が弱くしなります

ちょうど良いバランスはグランドの3型より少し上、6型ですとしなりが強いです。

しならない鍵盤は剛性が高く、

固い、音の立ち上がりが早い音が出て、

衝撃が指にダイレクトに伝わり骨に響くような痛さがあります。


しなる鍵盤は剛性が弱く、指の力がロスされて、音色の変化に影響があります。

長い鍵盤は弾き心地が良く、タッチ自身のコントロール性は良いです。


メーカーによっても感触が違います。

ヤマハは軽く固い、鍵盤を外して叩いてみても固い振動が伝わります。

カワイは、ゴツイ感じがしてもっさりした感じがします。

以外にも鍵盤のみでもメーカーの個性が出ていると思います。


問題はグランドの3型以下のピアノ、アップライトピアノで、

ピアノ本体との相性があまり良くありません

アメリカ製のスピネットピアノは鍵盤が長いです。

弾くき心地が良い、音がまろやかだと思ったことはありませんか?

浅い固い音色がするスピネットピアノに、長いまろやかな鍵盤を与えてバランスを取りました

しかし、最近のピアノは住宅事情からピアノ自身の幅の狭い、鍵盤の短いピアノが主流です。

確かに現行のスピネットピアノは鍵盤を少し薄くしていますが間に合いません、

サイズ的に鍵盤の長さが短くなるなら、厚さもそれに見合って薄くなるべきです


では、太いままの鍵盤の弊害を考えてみます。

ピアニッシモが出にくくなります

そっと弾きたいのに、大きな音が出てしまう、大太鼓の撥で小太鼓を叩くような感じでしょうか?

フォルテで音が割れます

小太鼓に大太鼓の撥で強く叩いたような感じでしょうか?

手に来る衝撃が強すぎる

1台ピアノを調律し終わった時、指が痛くなること良くありませんか?

お客様は毎日、何年もそのピアノで弾き続けているのです。

連打性が落ちる

太くてゴツイ鍵盤がゴリゴリ動きます、細ければ連打性は上がります。

(スピネットがタッチが重い原因の一つ、もう一つは鍵盤の急な前後の角度)


しかし、鍵盤を長くすることはできません。

また、全てを均等に薄くすることもできません。

ですから、鍵盤の角を少し落とすことで指に長くなったと錯覚させるのです

竹刀がもし、面取りもしていない角材だったら素振りはしにくいと思います。

持つところが面取りしてあっても、衝撃、しなりで刺々しい物を振っている感触が残ります。

また、角を落とすと、棒の中心をイメージしやすくなります

芯の通った素振りは違います。太鼓のの撥でも、ドラムスティックでも同じです。

それらと同じように、鍵盤の裏側を面取りすると、

芯を感じるタッチでコントロールがしやすくなります

指に感じる衝撃も和らぎます

音色、連打性、音色の変化にプラスを確実に感じました。


では、鍵盤裏側の面取りでマイナス部分はと言いますと、

ピアノの個性がかなり変わるので、お客様が戸惑う

タッチの感じ方は現物、人、部屋によって変わる


指への衝撃が強くて本能的に強く弾きたくないと感じていた人は、

面取り後タッチが重く感じる

よく、ヤマハでタッチが軽いという人がいますが、重量自身ではなく、

(つんざくような硬い音色、衝撃の強い鍵盤でこれ以上弾きたくない、

と本能で感じる場合があります、その場合は鍵盤を押し下げることに否定的になりますので、

鍵盤が軽く感じます、面取りは効果的に作用します)


また、面取りをした場合、

鍵盤自身の重量がほんの少しかわるので、(前後バランスは変わらないのでダウンウェイトは同じ)

鍵盤の初動が軽くなり、タッチが軽くなると感じる人もいる

(カワイの初動の重い鍵盤にはかなり効果的)


鍵盤の恰好が変わり、不安をもたらす

指で、耳で感じることができない人もいます

後任の調律師の方は、最初の状態を知らないのでなおさらです

一応、勝手に削り出すのでなく、お客様にご説明させていただき、

一本削って、音色が良くなったのを確認していただいてから削っていました。

しかし、これからはもう行いません。

しかし、ハンマーを突く整音、タッチの調整の他に、

もう一つ効果のあるものを発見できたと最初は感動しました。

こんなことをしやがって!

尊い物を汚したような気分になったかもしれませんが、

できるピアノがあれば試していただきたいのがホンネです。

6型以上は効果が薄くなります。








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10.10.2011~
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ノブ

Author:ノブ
こんにちは、ピアノの調律師の谷口です。ピアノの関する情報と、イタリア音楽など関するホームページを作っています。ぜひ立ち寄ってください。